昆布の健康効果と栄養価について

大型藻類の一種である昆布について解説します

昆布について

昆布の特徴

昆布は、日本料理の基本となる「出汁」の原料として欠かせない褐藻類です。肉厚で長い葉状の形をしており、乾燥後でも人の背丈以上になるものもあります。国内生産量の約90〜95%が北海道で採取されており、残りの約5%は青森県、岩手県、宮城県の東北3県で生産されています。昆布は寒流系の海藻で、宮城県以北の太平洋岸と北海道全域に分布しています。

主な昆布の種類

真昆布

  • 産地:道南の渡島や噴火湾周辺
  • 特徴:厚みがあり幅が広く、昆布の最高級品。切り口の色により「白口元揃」(最高級品)と「黒口元揃」(高級品)に分類される
  • 出汁の特徴:上品な甘みとコクがあり、澄んだ出汁が取れる。クセのない旨味で、出汁自体の主張が少なく他の食材に合わせやすい
  • 用途:汁物、煮物、鍋料理など幅広い料理に使用。肉厚なため佃煮や塩昆布にも加工される

羅臼昆布

  • 産地:知床半島の根室側(羅臼町)
  • 特徴:別名「オニコンブ」「だしの王様」と呼ばれる茶褐色の大きな昆布。真昆布と並ぶ高級品
  • 出汁の特徴:厚みのある濃厚な旨味と甘み、コクの強さが特徴。香りも高く、黄色みを帯びた濃いだしが取れる
  • 用途:濃厚な味の料理、煮物、ラーメンの出汁など。主張が強いため昆布単体の出汁として使用するのがおすすめ

利尻昆布

  • 産地:利尻島、礼文島、留萌以北、稚内、オホーツク海沿岸
  • 特徴:真昆布より幅が狭く、葉は黒褐色で固い。真昆布、羅臼昆布につぐ高級品
  • 出汁の特徴:透明で風味が良く、少し塩味のある澄んだ高級だしが取れる。磯臭さがなく上品な味わい
  • 用途:京都の懐石料理、お吸い物、湯豆腐など。合わせだしにも最適。肉質が固いため、高級おぼろ昆布・とろろ昆布にも使用される

日高昆布

  • 産地:日高地方(植物学的には三石昆布)
  • 特徴:濃い緑に黒味を帯びている。柔らかく煮えやすい万能昆布
  • 出汁の特徴:味も良いが、磯の香りが強く、後の広がりが続かない。だしは多少濁る
  • 用途:「食べる昆布」として人気。昆布巻、おでん、佃煮など。出汁としても使用可能で一般家庭向き

昆布の栄養成分

真昆布(素干し・乾)100gあたりの栄養成分値

⚠️ ヨウ素過剰摂取にご注意:
昆布のヨウ素含有量は極めて高く(200,000μg/100g)、他の海藻と比較して20倍以上です。過剰摂取は甲状腺機能障害のリスクがあります。だしを取る程度の使用であれば問題ありませんが、昆布を大量に食べることは避けてください。

補足情報:
・データは真昆布(素干し・乾燥状態)の値です。
・昆布の種類により栄養成分は若干異なります。
・水溶性食物繊維にはアルギン酸、フコイダンなどが含まれます。
・乾燥昆布は水で戻すと約3〜5倍に膨らみます。

昆布の健康効果

生活習慣病の予防・改善アルギン酸(水溶性食物繊維)による効果:

  • 血圧低下:体内の余分なナトリウムを排出し、血圧の上昇を抑制
  • コレステロール低減:悪玉コレステロールや中性脂肪値の上昇を抑制
  • 血糖値上昇抑制:糖質や脂質の吸収を抑える
  • 体重・体脂肪の抑制:特に内臓脂肪の減少に効果的

大妻女子大学の青江誠一郎教授による研究では、50人の肥満域にある男女が昆布粉末(アルギン酸3.3g含有)を8週間摂取したところ、男性の体脂肪が有意に減少し、特に内臓脂肪の減少に効果がありました。

筑波大学の研究チーム(2020年、European Journal of Clinical Nutrition)の分析では、アルギン酸などの水溶性食物繊維が血圧、血中脂質、血糖、体重を抑制する作用が確認されています。

免疫力向上・抗がん作用フコイダン(水溶性食物繊維)による効果:

  • 免疫増強作用:NK細胞の活性化
  • 抗腫瘍・抗がん作用:がん細胞の増殖抑制
  • 肝機能改善:肝細胞の再生促進
  • 抗血液凝固作用:血液をサラサラにする

NPO法人フコイダン研究所の研究では、フコイダン摂取により免疫増強作用、コレステロール低減作用、血圧・血糖値上昇抑制作用などの効果が認められています。

代謝促進・甲状腺機能のサポート:ヨウ素による効果

  • 甲状腺ホルモンの合成:全身の代謝を促進
  • 発育促進:子供の成長、胎児・乳児の発育に必要
  • 体調維持:健全な体調を維持する効果

ヨウ素は体内では生成できないため、食物から摂取する必要があります。昆布は優れたヨウ素供給源です。

ヨウ素の過剰摂取に注意 昆布は他の海藻と比較してヨウ素含有量が圧倒的に多い(200,000μg/100g)ため、過剰摂取には特に注意が必要です。ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能の低下や亢進を引き起こす可能性があります。出汁として適量を使用する分には問題ありませんが、昆布そのものを大量に食べ続けることは避けましょう。

骨や歯の健康維持:カルシウムによる効果

  • 骨や歯の形成を助ける
  • 骨粗しょう症の予防
  • 血液凝固作用

脂肪燃焼・抗酸化作用:フコキサンチン(褐色色素)による効果

  • 脂肪燃焼作用:体脂肪の減少
  • 血糖値低下作用
  • 抗酸化力:活性酸素を除去
  • 炎症物質を減らす働き

北海道大学の研究では、フコキサンチン2mg/日を8週間摂取したところ、HbA1c(血糖値変化の指標)が下がり、別の試験では体重や肝臓の脂肪量が減少したことが報告されています。

減塩効果:グルタミン酸(旨味成分)による効果

  • 減塩のサポート:しっかり出汁が効いた食事は塩分を減らしても美味しい
  • 食べすぎ防止:胃のセンサーに働いて満腹感を促進

死亡リスク・心疾患リスクの低減

約93,000人(45〜74歳)の日本人を対象とした大規模研究では、海藻の摂取量が多い人は死亡リスクが6%低く、昆布、海苔、わかめなどをほぼ毎日食べる人は、虚血性心疾患のリスクが男性で24%、女性で44%低下していました。

昆布の使われ方

出汁を取る

基本的な出汁のとり方

  1. 鍋に1リットルの水を入れ、昆布を30分以上つける(冬場は60分以上)
  2. 沸騰させないように弱火で15〜20分加熱
  3. 昆布の周りから気泡が出てきたら(沸騰直前に)火を止めて昆布を取り出す
  4. そのままにしておくと雑味が出るため、タイミングが重要

昆布の選び方

  • 昆布単体の出汁:羅臼昆布(濃厚な味わい)
  • 合わせだし:真昆布(コク重視)、利尻昆布(香り重視)
  • 初心者・離乳食:利尻昆布(クセがなく上品)
  • 出汁も食用も:日高昆布(両用可能で低価格)

料理への応用

  • 汁物・味噌汁:かつおと昆布の合わせだし
  • 鍋料理:真昆布の上品な出汁
  • お吸い物・湯豆腐:利尻昆布の澄んだ出汁
  • だし巻き卵:真昆布や利尻昆布
  • 煮物:羅臼昆布の濃厚な出汁

出典

  • 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版(文部科学省)まこんぶ/素干し/乾(食品番号:09017)
  • 筑波大学研究チーム(2020年)European Journal of Clinical Nutrition
  • 大妻女子大学 青江誠一郎教授研究
  • 北海道大学研究
  • NPO法人フコイダン研究所
  • 株式会社くらこん「昆布の栄養」
  • 株式会社フレスタ「昆布、ワカメ、海苔……古来から日本人の健康を守ってきたソウルフード”海藻”のチカラ」(2022年1月6日)
  • 白ごはん.com「昆布の種類と味の違いや特徴について」
  • 株式会社くらこん「昆布の産地と種類」
  • まいにち、おだし。「昆布の種類と選び方」(2025年10月4日)
  • こんぶネット「昆布の種類(昆布いろいろ)」(2022年5月10日)